今やモバイルといえば、すっかりスマートフォンが席巻している。
しかし2018年からはスマートフォンのチップを搭載したWindowsのノートPCもその一員になるかもしれない。
現在、スマートフォン用のSoCには、CPUやGPU、モデム、ISP、電力管理、果てはAIやVR/ARへの対応まで、あらゆる機能が1つのチップに収められている。
先の6月5日に、Qualcommが発表したSnapdragon850(SDM850)は、ARM on Windowsをターゲットにした新しいSoCだ。
CPUにKryo385を8期、GPUはAdreno630、モデムがSnapdragonX20、プロセスルールは10nmで、これは2018年の同社のフラッグシップ用SoCであるSnapdragon845と同等である。
昨年発表された同用途のSnapdragon835 Mobile PC Platformでは、スマートフォン用のSoCと型番を合わせていた。
だが今年はキリの良い50と上の数字にしており、Qualcommの自信の現れだろう。
Snapdragon 850 mobile compute platform gives Always On, Always Connected PCs a boost
パーソナルコンピュータのCPUはIntelが圧倒的に強い分野である。
そんなIntelはデスクトップには強いが、ラップトップのように電力に制限がある分野では、必ずしも最強とは言えないのが現状だ。
一方、Qualcommはモバイル分野が主戦場であり、電力あたりの性能が重要視される市場である。
モバイルPC用のSnapdragonを搭載したノートPCは公称で2日間の稼働が見込めるという。
実際、この春にお目見えしたSnapdragon搭載のノートPCであるASUS のNova Goは、軽作業ならかなりバッテリー持ちが良いという。
今後、ソフトウェアがこなれてくれば、さらに稼働時間が伸びる可能性が高い。
タブレットやスマートフォンは急激に進化したが、それでも作業効率はPCの方に一日の長がある。
だが屋外でPC作業をするにあたってはネックとなるひとつが電源だ。
Snapdragon搭載のWindows10ノートPCが一般的になれば、モバイルの流行にも変化が現れるのは想像に難くない。
とはいえ、QualcommのSoCがWindowsPCとして広く使われるようになるにはまだ壁がある。
現在、QualcommのWindows10で動くWindowsアプリはx86のエミュレートによる32ビットのみで、64ビットアプリが動かないという問題がある。
こちらは再コンパイルすることで可能となったが、今はまだすんなりと64ビットアプリケーションを使用できるようにはなっていない。
またモバイルチップでは非常に高いシェアを誇るQualcommだが、現在、その状況は安泰ではない。
Appleは次期iPhoneでモデムチップにIntel製のみ採用し、Qualcommを完全に排除すると言われている。
iPhoneは年々そのシェアを落としているとはいえ、その影響は少なくないだろう。
それどころか、大統領令によって中止となったが、ライバルであるBroadcomに買収騒動もあった。
Qualcommは同社の株主であるヘッジファンドから、半導体部門を切り離し、分社化か売却するよう圧力をかけられているという話もあり、モバイルPCチップへの進出は同社の今後を占う試金石になりそうだ。