スマートフォンをチェックするときに、やはり今でも最初に注目するべきはSoCになる。
なぜか日本のキャリアは公開したがらないが、スペックがハードのすべてではないとはいえ、スマートフォンの立ち位置は、採用するSoCにあらわれている。
SoCをみれば、そのスマホがメーカー内でどの位置づけにあるか、おおよその見当がつく。
SoCの主な機能
SoCは System-on-chip の略である。
もう少し具体的には、CPUやGPU、モデム、その他メディア等の各種プロセッサをひとつに組み込んだチップである。
このチップがスマホの性能を大きく左右すると考えて良い。
SoCには年々、多くのチップが組み込まれているが、基本的には下記の機能が中心となる。
CPU
PCでもおなじみのチップだが、省電力と低発熱をより強く意識した設計となっている。
2017年現在では、スマートフォンのCPUは基本的にARM系のプロセッサで占められている。
GPU
こちらもPCでおなじみのチップ。
グラフィック関連の性能に大きく関わる。
モデム
3GやLTEといったスマホでは必須の通信機能で、Wi-fiやBluetoothなども制御する。
なお、AppleのAxシリーズには現在に至るまでモデムは内蔵されていない。
最近ではこれらの主要な機能以外にも、以下の機能もほぼ必須になっている。
- 高速なメモリ、ストレージ、USBなどインターフェイスのサポート
- 音楽や動画など各種メディアの再生
- カメラの制御・画像処理
- ワイヤレス充電や省電力といったバッテリーコントロール
- 位置情報(GPS等)、近接、ジャイロなどの各種センサー
また上位のSoCには、
- 指紋、音声、虹彩などの生体認証といったセキュリティ
- ARやVRのサポート
- 機械学習、AI
こうした機能が組み込まれたチップも登場している。
主要チップメーカー
ここでは日本で一般的に手に入りやすいスマートフォンに採用されているチップのメーカーを列挙する。
Qualcomm
多くの通信関係の技術と特許を武器にAndroidのみならずモバイル分野でシェアを築きあげる最大手。
Snapdragonのブランド名でおなじみ。
Apple
Axシリーズは言わずと知れたiPhoneの、というかAPPLE専用のSoC。
CPUは常にシングルスレッドで他社を寄せ付けない処理速度を誇る。
MediaTek
廉価な中華スマホのSoCの代名詞であり、多くのメーカーに採用されてシェアを伸ばした。
最近ではHelioのブランドでミドルからハイエンドも担う。
Samsung
Exynosシリーズはほぼ自社のGalaxy専用であり、一部が中国のMeizuに使用されている。
Snapdragonに劣らぬ性能と省電力が特徴的。
Huawei
HuaweiのチップKirinは傘下のHiSiliconにより製造されていたが、現在はHuaweiブランドが名付けられている。
Huaweiの端末にのみ供給されているが、その成長に伴ってシェアを拡大した。
この他には日本ではほぼ無名だがSpreadtrumやRockchipといったメーカーもある。
かつては、Intelのモバイル向けATOMや、nVidiaのTegraといったチップも存在したが、両メーカーともスマートフォンのSoCからは撤退した。
製造プロセス
メーカーにとって、チップ製造での回路の配線の幅をいかに微細にするかは極めて重要となる。
幅の微細化により、性能の向上だけでなく、省電力とチップのサイズにも大きく影響するためだ。
PC用のCPUやGPUと同じように、モバイルチップも微細化が進んでおり、特に近年ではその進化が加速化している。
2010年にAppleはiPhone4ではじめて自社設計の Apple A4 を搭載したが、そのときのプロセスは45nmだったが、iPhone6 S の Apple A9 では16nm、そして今年2017年の Apple A10X Fusion や A11 Bionic では10nmとなっている。
当然、Qualcommをはじめ他のメーカーも同等、あるいはそれ以上の速度で微細化が進んでおり、来年2018年には早くも7nm、6nmと、一桁代へと向上を遂げる予定である。
big.LITTE
モバイルSoCのCPUはARMベースのコアを採用しているが、そのARMが省電力技術として提唱しているのがbig.LITTLEである。
CPUの性能を高めるには処理速度の高速化が必要だが、処理速度は電力と発熱とのトレード・オフの関係である。
デスクトップ用途なら、そこまで電力や発熱にシビアになる必要はないが、モバイル用途にとってはこのふたつを抑えるのはきわめて重要となる。
一方、最近のモバイル用CPUは高性能化が進み、一般的なアプリの処理ならば、ハイエンドのCPUではオーバースペック気味でもある。
現在、SoCのCPUは4から10程度の複数のコアを搭載しているものがほとんどだ。
そこで高速のCPUコアと低速なCPUコアを組み合わせ、軽い処理は低速なコアを中心に行い電力と発熱を抑え、重い処理には高速な、あるいはすべてのコアを動かすことで対応する。
ただし、このシステムにはそれを管理するソフトウェアの出来に左右される上、コントロールが難しい。
2013年に提唱された新しい技術のため、未だにその性能を発揮しているとは言い難い。
ファブレス
SoCに限った話ではないが、半導体の分野では、メーカーは基本、企画、開発、設計等を中心に行い、現在は自前の製造工場を持たないファブレスという形態が主流となっている。
ファブレス企業は工場に投資する資金を抑えられ、開発に専念できるというメリットがあり、上記にあげたSoCのメーカーにしても、Samsung以外は実際の製造はファウンドリーに委託という形が定番だ。
2017年の時点では、SamsungとTSMC(台湾セミコンダクターマニュファクチャリングカンパニー)の2社がSoCの大半の製造を請け負っており、製造プロセスの細分化、パッケージング技術などで競争も激しくなっている。