今年に入って体調がすぐれない上に、年度末前後の仕事が重なってしまい、なかなか回復しないでいる。
ただでさえ季節を感じにくい日々のなか、今年の天気の変化の激しさが余計に拍車をかけるのだが、それでも季節は巡るもので、早くも今年も5月に入ってしまった。
そんななか、来客の方から美濃忠の初かつををいただいた。
銘菓だが、これまで本家の美濃忠のものは食べたことがなかった。
初かつをというのは東海地方以外の人にはあまり馴染みがないそうだ。
今回、買ってきてくださった方も、生まれは他の地方であり、こちらに引っ越してくるまでは知らなかったという。
初かつをは、蒸し羊羹だが、米粉と小麦粉に葛を混ぜてつくる棹菓子だ。
尾張藩御用達の菓子舗といえば、今も残る両口屋是清と、駿河時代からの付き合いのある桔梗屋だが、桔梗屋自体は明治時代に廃業している。
その暖簾分けをした店がいくつかあり、美濃忠はそのひとつであり、初かつをは上り羊羹と並んで桔梗屋時代からの伝統的な棹菓子だそうだ。
そんな有名な和菓子だが、今まで美濃忠の初かつをを食べてこなかったのは、一棹売りだったこともある。
初かつをはかなり水分が多く柔らかい。
そのため日持ちがせず、賞味期限は4日しかないため、お茶会などの比較的大人数ならばともかく、現在の小家族では毎日食べないと食べきれない。
しかし美濃忠はかたくなに一棹単位での販売を続けていたこともあり、なんとなく敬遠していたのである。
ところが、今年から実験的に半棹での販売を始めたのだそうだ。
一保堂のほうじ茶とともに早速、いただくことにした。
色は美しい薄桃色をしている。
写真は切ったものなので見えないのだが、縞模様が入って、その名の通りカツオの柵のようだ。
これはオフィシャルの写真を見てもらうほうがわかりやすいだろう。
かなり柔らかく、口に入れると溶けるように崩れてしまう。
個人的にはちょっとやわらかすぎて、もう少し歯ごたえがあるもののほうが好きなのだが、これはこれで贅沢なつくりだ。
季節の和菓子といえば、そういえば今年は柏餅も未だに食べていなかった。
調子が悪いとなかなか手が伸びないうちに季節が終わってしまうのが残念だ。