Pixel2の件は2回ほど記事にしたが、前回に本当は各予定だった技適制度について。
Pixelが販売されない件については、技適制度が原因ではないかと批判する声も多かったので、昨年改正された技適制度や総務省の方針の推測、そして落とし所を書いてみる。
昨年の電波法の改正点
制度の改正により、昨年2016年5月21日から技適を通っていないスマートフォンの使用が一部認められた。
ただ、一部の条件だけがひとり歩きして誤解したまま受け取っている人もいるようだ。
許可される条件を端的にまとめると
- 訪日観光客等の外国人
- FCC認証もしくはCEマークのある端末
- 入国の日から90日間
かなり強引にまとめてしまったので、もう少し詳しくは下記のURLを参考に。
総務省 電波利用ホームページ | 海外から持ち込まれる携帯電話・BWA端末、Wi-Fi端末等の利用
実のところ、日本人にとってはほとんど意味のない改正である。
増える訪日観光客や、東京オリンピックを見据えての内容だろう。
思いもよらない電波法違反の可能性
技適の問題はスマートフォンに限った話ではない。
近年ではWi-FiやBluetoothなどを搭載した機器が増えており、スピーカー、自撮り棒、スポーツウォッチやアウトドアウォッチなど様々なものに通信機能が備わっているが、当然、すべて対象となる。
比較的わかりやすいものは良いが、現在でも思いもよらないものに技適が必要な通信機能が搭載されている。将来については尚更だろう。
以前、PS4をひと足早く手に入れるため、北米版を購入したところ技適マークがなかったと話題になっていたこともある。
一昔前とは違い、海外の製品も当たり前のように入ってくる時代、知らない間に電波法違反となっている可能性は誰しもある。
各国に存在する認証制度
技適制度は時代に合わない、国内メーカーやキャリアの保護などと指摘する人もいる。
だが、技適に類する制度は先進国ならばほぼ存在するし、フリーに電波を利用できる国はめずらしい。
代表的なのは、アメリカのFCCやEUのCEマーク、中国にもCCC認証といったような制度(対象は電波だけではないことも多いが)が存在する。
不具合が起こったときの責任が生じるという問題もある。 しばしば利権の問題にも絡められるが、そういった側面はあるにしても、必ずしも意味のない制度というわけではない。
電波自体、野放しになれば他者への妨害行為に使用される可能性もある。
技適マークのない端末利用の現在
実際に技適を通っていないスマートフォンの使用はグレーな存在となっている。
総務省にしても、
違反になる場合があります
という曖昧な物言いしかしていない。
実際、昨年には総務省に技適のない通信機器を使用していたとして、ブロガーが総務省に電話したものの、具体的なアクションを起こされることなく終わった顛末を書いたことが話題となっていた。
おそらく総務省側としても困っているのだろうということは容易に察知される。
現行、日本市場と技適制度は噛み合っていないのだが、技適制度そのものを廃止するというのは問題もあるため、なかなかよい方針はないのだろう。
個人で技適を通すという方法はあるものの、具体的な価格は諸説あり不明だが、少なく見積もっても十万円以上はかかるだろうと予想されるため、スマートフォンの価格からして現実的ではない。
おそらく総務省は黙認したい
現在ではまだiPhoneアプリが圧倒的に収益率がよいとはいえ、これだけ世界市場でのシェアに差がある以上、今後のモバイル市場を見据えれば、
世界市場でシェアを握るメーカーの端末の多くが日本で使用できないのは、長い目で見るとよいことではないだろう。
先の記事では、実機テストのアウトソーシングについて触れたが、アウトソーシングするにしても、国内でテストできればそれにこしたことはないはずだ。
アプリはまだしも、ハードウェアの開発には手間がかかりすぎることになる。
だとすると、技適の落とし所はどのような形が良いのだろうか。
現在、すでに技適を通っていないスマートフォンが溢れているとはいえ、ほとんどのスマホが、FCC、CE、CC等の認証を受けている。
今のところ、海外の認証を通っているが日本の技適を通っていないスマートフォンが問題を起こしたという事例は見つけることができなかった。
たとえばFCCは日本の技適よりも緩いのだが、これらの海外の認証を通っている端末が問題を起こす可能性はかなり低いと言われている。
総務省は、おそらくこれまでの状況を見ると、今後もしばらくはグレーな存在として扱いたいのではないか。
いわゆる二次創作物のように、勝手にやってくれる分には構わないが、問われれば禁止ですと答えるようなものだ。
(最近は公式的に二次創作OKな出版社や作者も増えたが)
ただ個人はともかくまともな企業ならコンプライアンスの問題もあって使用する訳にはいかないだろう。
技適のないスマートフォン利用の落とし所
ひとつの案としては、FCCやCEの認証を通ったスマートフォンのみを対象とし、簡単な講習を受けた人に使用を許可するという形だ。
もしくは使用するスマートフォンを届け出る、場合によってはその複合も考慮すべきだろう。
幸いなことに、猟銃や自動車と異なり、モバイル端末は即座に人命に影響する可能性はほとんどない分野である。
とはいえこうした形では、天下り先を増やすだけだという指摘もあるだろうし、不具合が起こったときの責任が生じるという問題もある。
トラブルの発生時にも、今のようなグレーゾーンの状態ならば本人の自己責任で済ませられても、許可制にすればそうはいかなくなるだろうし、仮に技適とは関係のない状況でも問題視される恐れもある。
根本的な解決はグローバルレベルで統一した団体をつくることだろうが、現段階でアメリカやEU諸国にあまりメリットがない状況では難しいのだろう。
そうなると、なるべく簡便かつ費用も安い方法で合法化するとなると、こういった方法が良いのではないだろうか。