世に出た当初はまだ未成熟でiPhoneには及ばないAndroidスマートフォンだったが、今では廉価な端末ですらそう遜色ないところまで来ている。
それでも、いくつかの重要な部分では、いまだiPhoneに敵わない点がある。
なかでもAppleがハードとOSを自社で開発してるところは大きなポイントだ。
そのためAppleはiPhoneやiPadのパフォーマンスを引き出しやすい。
iPhoneがベンチマークテストで優秀な成績を収めるのも、チップの能力に加え、開発体制の連携は大きいだろう。
反対にAndorid OSは基本的にはGoogleが開発して公開しているソースを、各ハードウェアのメーカーが自社の端末にカスタマイズしている。
PCと比べてまだモバイル環境は電力を始めとする制約が多く、無駄が許されにくい環境下においては、Appleのやり方のほうがうまくいくようだ。
遅ればせながらGoogleも、昨年よりPixelブランドで自社設計の端末に乗り出している。
従来のNexusは製造元の意向が大きかったが、PixelではGoogleが設計しメーカーに製造を依頼するという形を採っている。
とはいえ、今のところ成功しているとは言い難い。
特に半導体需要の世界的増加の煽りで部品の調達に苦労しているようで、発売当初より品薄の状態が続いたまま、製造中止となってしまった。
日本でも結局未発売のままである。
すでにPixel2の話が出ているため、本格的に動き出すのは今年の後半以降ということになりそうだ。
Androidの父が主導するEssential Phone
そんななかで、大きな注目を集めているのが、Essential Products社である。
同社CEOのAndy Rubin氏はAndroid OSの生みの親であり、Googleでは開発から製造戦略の責任者を勤めていた人物である。
そんな彼が起こしたのがこのEssentialProductsであり、その最初の製品のひとつとしてAndroidスマートフォンEssential PH-1が発売を間近に控えている。
Androidの父の異名を持ち、Android OSに理解の深い彼が主導し開発するスマートフォンには注目が集まるのも当然だろう。
PH-1は通称Essential Phoneと呼ばれており、QualcommのSnapdragon 835に4GBのRAM、そしてUFS2.1の128GB内部ストレージと、現在販売されているAndrodiスマートフォンとしては最高スペックを誇る。
さらに5.71インチの高精細QHDディスプレイは流行のベゼルレス、チタンのボディに背面はセラミック、カバーガラスはコーニング社のGorilla Grass 5を使用。
デュアルカメラはRGBカラーとモノクロのセンサーで、これはHuaweiのP、Mateシリーズと同等の方式だ。
さらには本体にセットする360度全方位カメラも用意されている。
アメリカではSprintからとSIMフリーで販売される予定で、直販では$699で予約受付中だ。
日本発売も確実視されている
スペックもさることながら、日本では別の意味も一部のガジェットファンに注目されている。
このEssential Phoneは日本展開がほぼ確実と思われているからだ。
ひとつには同社のサイトに日本語のページがあり、かなり力を入れていること。
もうひとつが対応する周波数帯に日本のNTTドコモ以外にほとんど使われていないことである。
LTEのバンド19に対応するスマートフォンもあるが、日本への出張や観光のためであり、日本で正規に販売されることはない端末も登場している。
こうしたメーカーではそもそも公式サイトの時点で日本語に対応していない。
今のところ日本での予約は受け付けていないが、上記の件から、NTTドコモか、Sprintの関係でのソフトバンク、あるいはSIMフリーで販売されることはほぼ確実ではないかと言われている。
発売の遅れと上級幹部の退社
期待の高いEssential Phoneだが、いまだ、肝心のスマートフォンは姿を表していない。
北米市場では6月末に出荷が開始される予定だったが、Andy Rubin氏の話では、数週間ほどかかるという。
気がかりな話として、この大切な時期にEssential Products社から上級幹部の退社が相次いでいるところだ。
マーケティング担当副社長Brian Wallace氏、コミュニケーション担当Andy Fouche氏、さらにユーザーエクスペリエンス担当のLiron Damir氏らの名前が上がっている。
彼らが重要なポジションであることから、彼らの退社がEssential Phoneの出荷の遅れに影響しているのではと推測する向きもある。
とはいえEssential Phone自体は、既にFCC(連邦通信委員会)とWi-Fi Allianceを通過しているため、そう遠くない時期に発売されるのはほぼ確実とおもわれる。
さらに先月にはAIホームアシスタントを睨んで3億ドルを調達したというニュースもある。
そのため会社の資金繰りには問題はなさそうだ。
いずれにしても期待通りの製品として評価を集めるのか、それとも期待はずれとなるのか。
注目も大きいだけにその行方と、そして日本での発売も気になるところだ。